さめたコーヒー

kbaba1001's blog.

リモートワークとフリーランスをはじめた理由

リモートワークをするようになって4年ほど経ってしまった。リモートワークについて聞かれることが多いので、「なんでリモートワークはじめたんだっけなぁ」と思い返したので記事にすることにした。

僕はリモートワークのエンジニアになる前は、会社員で客先常駐するエンジニアをやっていた。といっても、いわゆるSIerという雰囲気の会社ではなく Web 系でアジャイルやRubyによる開発を受託して1~10人程度で開発をする会社だった。 この会社には3年務めていたが、自社に出社したのはおそらく1年分にも満たない日数しかない。客先常駐する場合、自社には出社せずに直接現場であるお客さんの会社に出社して、仕事が終わったらそのまま帰る。自分の会社に行くのは社内で用事があるときか仕事をお客さんのところから自社に持ち帰ったときか仕事がないときかのどれかだった。同じお客さんの会社にずっといるような社員の場合は、お客さんの会社名義の名刺を持っている人もいた。

今でも僕はお客さんから仕事を受託して開発を行っているので、結局7年くらい受託開発しかしてない。あまり自分でサービスを作ろうというモチベーションが高くないのだが、最近はClojureやGraphDBなどのちょっとお客さんに提案しづらい技術で開発したい欲望が高まっているので、近々なにか作るかもしれない。

リモートワークをやろうと決心したきっかけ

当時「リモートワークをやろう」「この会社をやめよう」と思ったきっかけがある。

僕はその日もお客さんのオフィスに常駐していた。もう1年くらいやっているプロジェクトだった。締切は厳しいが新規開発案件で当初から関わっていたのでそれなりに愛着もあり楽しんで仕事を出来ていた。 ただひとつだけ頭がおかしくなるほど嫌なことがあった。

席の近くにいびきをかいて寝ているおっさんがいるのだ。

毎日毎日大きな声でいびきをかいて寝ている。しかも一日中そのいびきをしている。

そんな社員がいるはずないって?だがいたのだ。なんでクビにならないのか疑問だけどとにかくその人はクビにもならず、毎日いびきをかいて寝ている。 しかも噂によると社員ではなく外注らしい。つまり僕と同じく客先常駐の立場で現場に来ているらしい。余計になぜ契約が切られないのかわからないが、とにかくその人は半年くらい席が近くて、その間ずっといびきをかいていた。このいびきはめちゃくちゃ大きな声で、フロア全体に響き渡っていた。 このときのお客さんは大手だったのでかなり広いフロアだったが、それでも響いていた。ときどき別の階の社員がこのフロアに来るといびきが轟いていることに驚いていた。 僕が経験した限り最悪の環境だった。

彼の挙動をみていると、5分仕事をして5分寝て起きてまた5分仕事をして5分寝る、みたいな感じだった。おそらくナルコレプシーなのだ。 病気だ。病気はしかたがない。誰しも患う可能性はある。病院にってしかるべき治療を受けてもすぐに治るものではないだろう。 僕もはじめはそう思って我慢していたが、やはり1か月も経つとイライラしてきた。いや、イライラはずっとしていたが我慢できなくなってきた。

ナルコレプシーなのは別にいい。本人が仕事中に寝てようが僕には関係ないし、本人としてもそれで納期までに作るべきものができていればそれでいいのだろうし。 だが問題はいびきだ。彼はものすごく太っていたし、毎日のようにマクドナルドの袋を持って出社していた(悲しいことにこんな習慣がわかるくらい席が近かった)。 いびきによってフロア中の人間、とくに席が近い人たちが被害を被っているのに、いびきを抑えようという姿勢がまったくなかった。 ダイエットすればいびきも改善されると思うのだが、ダイエットする気もなさそうだった。 本人にいびきをかいている自覚がないのかもしれないとも思ったが、彼の開発チームのメンバーがおそらくいびきのことを指摘しているはずだ。

彼は自分が周りの人に迷惑をかけていることを気にしない人だったのだろう。 いびきだけでなく、体臭も臭いのにサーキュレーターでその臭い周囲に振りまいていたし、起きてるときも基本的に声が大きかった。 まぁそういう些細なことは僕が彼のことが嫌いだから余計に気になった点ではあるけど、とにかくいびきが嫌だった。

僕たちの開発チーム全員がいびきにまいっていた。上司やお客さんに対して彼から座席を離すように交渉し、どちらも尽力してくれたと思うけどなかなか実現しなかった。 結果的に半年ほど僕たちはいびきに苦しめられた。

いびきとの戦い

いびきがうるさいならイヤホンでもすればいいじゃないか、とここまで読んだ人は思ったかもしれない。 実際そのとおり。お客さんの会社は大手だったが開発環境に関しては割とルールがゆるくてイヤホンをして仕事をしても大丈夫だった(この辺のルールが厳しいとイヤホン禁止だったり私服禁止だったりする)。 だから僕たちのチームのメンバーはミーティングで席を外すとき以外はずっとイヤホンをしていた。

これで快適に仕事ができる。そう思ったが別の問題が発生した。

とにかくコミュニケーションが取りづらいのだ。

皆イヤホンをしているから気軽に近くの人に話しかけられない。話しかけたつもりが無視される(声が聞こえてない)。 チャットで事前に「ちょっと話せる?」みたいなことを言って会話をする。それが面倒くさくなってだんだんチャットでしか話さなくなる。 すぐ隣の人と話すためにはるか遠くのサーバーを介して会話をする必要があった。

満員電車にゆられて出社して、いびきに耐えるためにイヤホンをして、チャットで隣の人と会話をしながら開発をする日々が続いた。

ある日ふとなぜ出社するのかわからなくなった。まったく出社する意味がなかった。出社しなければ仕事が差し支えるとは思えなかった。 むしろ自宅のほうがよほど快適に思えた。少なくとも僕の家には一日中いびきをかくおっさんはいない。

リモートワークをしたいという話を同僚にすると「別に現状で仕事ができているんだからそれでいいじゃないか」といわれた。 だが僕としては会話をするわけでもないのに隣同士に座っている意味がわからなかった。チャットで仕事ができると言うならリモートワークで十分だと思った。 僕としてはいびきだけでなく、席がちょっと狭かったりフロアの床にマットが敷いてあるせいでハウスダウトアレルギーがしんどいかったというのも出社したくない理由だった。

結局そのプロジェクトではリモートワークは出来なかったが、自社に持ち帰るまではできた。 お客さんにリモートワークを説得するのは難しかったし、ネットワーク的にVPNを用意したりも面倒だったので時間はかかったがいびきからは開放された。 しかしその頃には僕はもう会社を辞める決心をしていた。

感じたこと

この体験でいくつか感じたことがある。

1つ目は自分の裁量で判断・行動できることが少ない環境で生きていてはいけないということ。 僕はいびきや、それに伴ってコミュニケーションの自由が奪われたことが嫌だった。 しかし僕にはそのプロジェクトをやめる裁量はなかった。 上司と十分に相談したかと言われれば微妙なところだが、僕はその前にやっていたプロジェクトも結構嫌な思いをしていて(こちらは純粋にコードや開発環境がレガシーなことが辛かった)、 そのときもなかなかプロジェクトをやめさせてもらえなかったので、話しても無駄だろうという気持ちがあった。 それに僕はまだ入社2,3年目で発言権が弱く、会社員として上司とどのように交渉すればいいかということを全く知らなかった。そういうコミュニケーションや交渉といった政治的なことをうまくやる力が不足していた。 僕としては単にそのプロジェクトをやめたかった。そのプロジェクトの契約をしたのは僕ではなく会社であって、その契約に口を挟む裁量は僕にはなかった。 もし僕がフリーランスで自分でその契約を結んでいたならば、さっさとその案件をやめていびきから開放されていただろう。 そんな風に自分の裁量で判断・行動出来ないことに耐えられなかったし、何でも将来に紐付けて考えがちな20代前半の若僧らしく、そんな人生を歩むべきではないと思った。

2つ目は、早々クビになることはないということ。 いびきをかいて寝ているおっさんも少なくとも半年はクビになってなかった(半年目以降どうなったのかはわからない。僕は会社をやめてしまった)。 当時の僕は会社をやめることが怖かった。フリーランスになるのも嫌だった(実際、その会社をやめてすぐにフリーランスになったわけではない)。 固定給のない生活というものがよくわかってなかった。よくわからないことは怖い。 労働基準法に守られない生活というものに漠然と怯えていた。 だが、いびきをかいて寝ているおっさんも契約を切られずに仕事ができるのだから、僕でも大丈夫だと思った。 (あのおっさんがフリーランスだったのか別の会社の社員だったのかは知らないけど)

3つ目は、あのおっさんこそリモートワークをするべきだったんじゃないかということ たぶん彼は仕事はできるのだろうから、単にいびきで他の人に迷惑をかけなければいいわけだから、彼こそリモートワークをしていればオフィスの人たちは何の被害も被らなかった。 僕も体調が悪いことがしばしばあり、自分自身がナルコレプシーなどで他人に迷惑を掛ける状況になる可能性はあるわけで、 そういうときに自分で対策できない人間になりたくなかった。 だからリモートワークという手段を自分が選択できる人間でいたかった。

もしあのおっさんがこの記事を読んでいて、今でもいびきで人生をうまくやれてないならリモートワークをお勧めする。

リモートワークをやってみて感じたデメリット

リモートワークのメリットは言うまでもなく自分に適した環境で仕事ができることだ。いびきのない場所で仕事ができる。 しかし4年もリモートワークをしているとデメリットについても感じることはある。

とはいえ、僕は他の人の書いたリモートワークがつらい、みたいな記事を読むたびに全く共感できないでいる。 僕は満員電車が嫌いで今では都内でも車を運転している。金はかかるが電車に乗るよりマシだ。ハウスダストやダニのアレルギーがあってオフィスという環境が決して快適ではない。 最近では卵・牛乳のアレルギーも見つかったので外食が面倒くさい。そもそも一人を苦痛だと思わない。孤独は創造力が高まるので豊かだ。

リモートワークで生活習慣が乱れるという人もいるが、僕は会社員時代と変わらず平日10:00-19:00で仕事をしている。 自宅で集中できない(遊んでしまう)ということもなく、むしろ僕は自宅を最強の環境にすることが好きだ。

僕が感じるデメリットは次の2つだけだ。

  • 健康被害
  • 暇そうに思われる

健康被害

家で仕事をしてまったく運動しない場合、筋肉は衰えるし太るしろくなことがない。 僕はほとんど運動しなかったのでこの4年間でずいぶん太ってしまった。

家に引きこもっているときに万歩計をつけていたことがあるのだが、なんと500歩程度しか歩いていなかった。 近所のコンビニに買い物に行くだけでもこの程度は歩くというのに、それだけの歩数で一日を終えてしまっているのだ。 電車で出社していればそれだけで30分くらいはあるくだろうから、誰でも5,000~10,000歩くらいは最低でも歩いているはずだ。 その運動が失われることは危険だ。

在宅ワークでは、宇宙船に乗ったつもりで運動する必要がある。 僕は今年になってようやくジムに通い始めた。最近はほぼ毎日ジムに行っている。 出社すれば無料で運動できるところを、わざわざ金を払って運動するというのが癪だが、これも自分の好きな環境で運動しているわけで同列に考えることでもないだろう。

また、筋肉以外の健康被害として、僕は逆流性食道炎を患っている。 逆流性食道炎は食道から胃の入り口あたりが炎症している病気なのだが、これは食べ過ぎや食後に横になる習慣があるとなりやすいようだ。 要するに胃酸が食道側に逆流するとこの病気になる(歳を取ると胃の入り口を閉める筋肉が弱るので高齢の方が患いやすいらしい)。 僕はわりとすぐ横になる癖があって、結構食後すぐに寝っ転がって休むということをしていたので、おそらくこの習慣のせいで逆流性食道炎になってしまったと思っている。 最近は食後2時間程度は横にならないように気をつけている。

暇そうに思われる

ずっと家で仕事をしていると近所や家族から暇そうに思われる。 近所の目は別に気にしなければ害はないので別にいい。家族から暇そうに思われるのはちょっと問題だ。 結婚してみてわかったが、忙しかったり仕事に集中したいのに家族から話しかけられるのは嫌だし、 仕事中でもちょっとコーヒーを入れて休憩するようなこともあるわけでそれを暇そうだと思われるのも癪だ。

この問題に対してはまだ解決策を思いついていない。コワーキングスペースにいくのも嫌なので、家族に対してはなんとか自分が一日8時間程度は仕事しなければならなくて、 他の人と同様に忙しいということをわかってもらうしかない。

まとめ

そんなわけで僕としてはリモートワークは些細なデメリットはあるものの、それを無視できるくらい最高の働き方だと思っている。 フリーランスも自分の裁量で仕事ができるので好きだ。やっぱり労働基準法に守られた従業員という立場には憧れるけど、なかなか自分の気持ちに沿う会社というのもないように思うし、 終身雇用の時代でもあるまいし一つの会社にずっといるものでもないのだからフリーランスでも生きていける力はあったほうが良いように思う。

最近ではフリーランスも微妙に不便なので会社を作ることにして、つい先日登記が終わったので僕は合同会社ノイマンの社長ということになってしまった。 まったく会社を作ろうなどと思っていなかった。税金とか社会制度とかの都合で仕方がなく作った。社長になりたいとか起業しようなどという気概は一切ない。 フリーランスになったのもなりゆきだったし、会社を作ったのも仕方がなくだ。 他の社長もこんな感じなんだろうかとぼんやり思ったりする。